本章では、魔術の根幹を成す「魔力」の本質について考察する。魔術を正しく理解するためには、まず魔力がどのような性質を持ち、どのように生じ、どのように扱われるかを把握することが重要だ。魔術をめぐる多様な学説や流派は存在するが、ここでは一般的かつ広く受け入れられている理論を中心に述べる。
内的魔力とは、術者が自らの内に蓄えているエネルギーのことである。人間や動物、精霊など生命を持つ存在には少なからず内的魔力が備わっているとされる。
外的魔力は、自然界や異世界に存在するエネルギーを指す。これを直接、あるいは間接的に取り込むことで魔術を発動する流派も多い。
魔力はどこから生まれるのか。その源泉をめぐっては多くの説があるが、本書では代表的な三つを示す。
生命力説:
すべての魔力は生命の営みによって自然と生成される、という考え方。生物が生きている限り一定の魔力が生産され、死後、自然界へ還元される。
自然循環説:
大気や土壌、水流に魔力が含まれ、それが生物に取り込まれて内的魔力となるという考え方。自然界と生命体の間で魔力が循環している。
異界由来説:
この世界の魔力は、上位次元や異世界から常に少しずつ流入してきており、そこを起点としてすべての魔力が存在するとする説。召喚術や異界の魔物の存在が、この説を裏付ける証拠として挙げられる。
実際には、これら三つの説が複合的に絡み合っていると考えられ、地域や研究者によって強調する観点が異なる。